『 1人の人間の存在』をテーマに人物画の連作を制作しています。できることなら《 全ての人をクローズアップしたい 》という思いがあります。
随分と前になりますが、アッバス・キアロスタミ監督の傑作『クローズ・アップ』(1990)にボロボロと涙し、折に触れては心に刻んできたことに影響を受けています。
遡れば、子ども時代に観た『カッコーの巣の上で』(1975)はその原点かもしれません。
ミロス・フォアマン監督の「私が描きたかったのは、『人間の存在とその素晴らしさ』だ。」というようなコメントが忘れられないのです。
《人間に必要なものは尊厳・世の中は理不尽》なんてことに、いたく心が熱くなったり寒くなったり。その後の人生も、今も、あらゆるアートや事柄に影響を受け、今のわたしがいます。
人物画を描く際、「(私自身でもある)その人」の「ある一瞬」を切り取ります。
常に変化し続ける表情。長い人生における真実と精神性。心の深みで起きている時空間の行き来。。。それら無限の要素を、(混沌とし矛盾し理解不能であっても)感じるがままに、「切り取った一瞬」の中に凝縮して留めるよう意識しています。
デフォルメで再構築した顔と体の「独自の美・歪みの魅力」は最も大切にします。
その奥にある、観えない心や聴こえない囁き・まとう空気・呼吸や体温や湿度。
それらが滲み出るような、観る方々それぞれが自由に想いを巡らせてくれるような絵を目指しています。
2025年3月16日 深津千鶴